嘘告彼氏と振られる彼女 (創作小説) 1日目
高校一年 8月 夏休み中旬
「付き合ってください⋯」
俯きながら、たどたどしい口調で放ったその言葉に驚いたのは、自分だった。
俺は全く意中にもない相手に告白をしてしまったことに気づく。
顔を照り付ける夏の夕日。道路を走る車のエンジン音。湿気の多い空気に、汗を吸い込んで背中に張り付くエアリズムの下着。
どれをとっても不愉快極まりなく、彼女の口から返事が告げられるまでのわずかな時間さえ、耐え難くて仕方なかった。
「ありがとう⋯ 嬉しい⋯」
頬を少し赤らめながら、彼女は言った。
こちらの目を見つめ、なめらかなブラウンの髪に手櫛をかけるその仕草は、まさに恋人に見せるそれであったことは言うまでもない。
その瞬間は、まさしく死刑宣告を告げられたような心地だった。
「そしたら、私たち⋯ これから恋人ってことだよね⋯?」
「う、うん⋯」
「ふふっ。 嬉しいな⋯」
自分が取り返しのつかないことをしてしまったと気づいた。
罪悪感で胸が潰れそうなほどに苦しい。
嘘の告白を受けた彼女には、きっと俺が想像も出来ないほどに世界が美しく見えているのだろう。 彼女の透き通った瞳が、その変えようも無い事実を雄弁に語っている。
ついさっき自分の恋人となった彼女と別れ、その後ろ姿を見送った後に
俺が考えていたことはただ一つ。
「やってしまった⋯」
後悔先に立たずとはよく言ったものだな、などと自嘲しながら俺は心の中で呟いた。
俺の初告白は、甘くも酸っぱくも無い。ただ後悔の味だけがした。
「どうやって彼女を振るか」
その時の俺の頭にあったのは、ただそれだけだったのだ。
これは、好きな人に告白して、見事永遠の愛を手に入れる。
そんなハッピーエンドの青春物語ではない。
間違いで告白してしまった彼氏と、それを了承してしまった彼女の、
ほろ苦い後悔の青春物語だ。
あとがき
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
自分の日記として先月よりブログを始めてみたのですが、せっかくなので人生初の創作小説に挑戦してみようと思います!
最後まで完結するかどうかは正直分かりません!
初心者で拙い文章だったり、ヘヴィな物語だったりしますが、もしよろしければ今後も応援してもらえると嬉しいです。
とりあえず目標は「継続」にしておきます。
ここまでありがとうございました!