だあすう日記

初めまして。まったり生きてます。

「パズドラZオルタナティブ 第6話」

「ごめんシロップ、待たせたかな?」

校門前で待っていたシロップに、メラゴンが声をかける。

「ううん、全然!思ってたよりも早かったね。メラゴン。」

 

本日の体育の時間に、ザブゴンとメラゴンの間で起こった喧嘩。その事情聴取のために二人は担任のグリムロック先生に呼び出されていた。

 

「うん。怪我も無かったってことで早めに帰された。お互いの親が呼ばれることもなかったよ。」

「そっか~、それは良かった。」

「怪我があったらもっと大事になってたと思うから、シロップが私の怪我を治してくれたおかげだね!ラッキー♪」

 

そう言うとメラゴンは嬉しそうに校門から歩きだした。一方シロップは、メラゴンを傷付けたザブゴンの処遇がどうなったのか、内心気掛かりだった。そこでシロップが口を開く。

 

「ザブゴンの方はどうだったの?」

「結局最後まで認めなかったよ。というかほとんどだんまりだったかな。」

「そんな!謝罪の1つもなく?」

「うん。でもその時、弁明するどころか私に対しても何も言わなかったんだよね、ザブゴン。何かに怯えているような感じだったなあ。先生が怖かったのかな。」

「そっか… ザブゴンは今はどうしてるの?」

「まだ先生と話してると思うよ、多分。埒が明かないから私だけ帰されたんだと思う。まあ結局謝ってはもらえなかったよ。」

「そんな!あんなことをしておいて謝りの1つも無いなんて!メラゴンは怒ってないの?」

 

シロップは怒り心頭という表情でその場に立ち止まりメラゴンをまっすぐ見た。顔にはザブゴンのことを許せないという気持ちがはっきりと表れていた。

正義感が強いためなのかもしれないが、つい今日会ったばかりのクラスメイトのことをこんなにも真剣に考えてくれるその姿に、メラゴンは嬉しくなった。

 

「うん、いいの。私にとってザブゴンの謝罪よりもシロップといる時間の方が大切だから。」

 

そういうとメラゴンは少し恥ずかしそうに笑った。シロップは本当は何か言いたかったようではあったが、それを言葉にはせずに静かにメラゴンを見て苦笑した。それを見てメラゴンが呟く。

 

「それに!早く真器を作れるようになって、ザブゴンをこてんぱんにしてやらなくちゃなんないからね!」

 

メラゴンがいつもの調子に戻っていることを見て、シロップは心の中で安心した。そしてそんな彼女の姿を見て、自分もいつまでも駄々をこねている訳にはいかないと思い、前を向いてメラゴンの横に並んで歩きだした。

 

「そうだね!ザブゴンには痛い目を見てもらわなきゃだね。でもどこでやろうか?」

「それは宛があるから、着いてきて!」

 

そういってシロップはメラゴンの後を着いていった。学校のある街を離れて、山の方へと進んでいく。ほとんど獣道で舗装も全く無い山道を進んでいくと、ふと視界が開け、盆地のような場所に出た。

そこには小さな集落があった。

その集落の少し標高が上のところに、野菜畑のある広い庭付きの木造家屋、その更に奥には大きな道場のような建物があった。

 

メラゴンはその家の庭に入り、奥にある大きな建物の前で立ち止まった。

 

「ここが私の家、そしてこれはうちの道場だよ!」

メラゴンが誇らしそうに両腕を広げた。それを見てシロップが頷く。

「なるほど、宛があるってそういうことだったんだね。」

「そう!私のお母さんが体術の師範代なの。道場はその稽古のために作ったんだって。」

 

そう言いながら、メラゴンは慣れた手つきで道場の入り口の引戸に手を掛けた。

しかし、扉は開かない。

「あ、あれ?」

力を入れても扉はびくとも動かなかった。メラゴンが首をかしげる

「今日は稽古があるから鍵かかってないはずなんだけど、閉まってるな。」

「どうする?メラゴン。」

 

心配そうにシロップがメラゴンの横へ来る。しかしメラゴンはそこまで心配していなさそうだった。

「大丈夫、もうひとつ宛はあるんだ!」

 

そう言うと、メラゴンはシロップを連れて、メラゴンの家の裏手にある長い石畳の階段を登っていった。

その頂上には、大きく開けた石造りの広場があった。木々が広場を取り囲んでおり、まるで自然公園のような出で立ちだ。

標高が高いためか、木々の隙間からは青い空の色が覗き込んでいる。

 

登りきって息の上がったシロップに、メラゴンが呼び掛けた。

「シロップ、後ろ見てみて!」

「わぁ…すごい!」

 

振り返ると、そこにはついさっき自分たちがいた町の風景があった。

大きく開けた視界に、町と空の広々とした景色が飛び込んできた。

 

「ここすごく見晴らしがよくて、町を一望出来るからすごく好きな場所なんだ。」

メラゴンが呟く。

「そうなんだね。素敵な場所に連れてきてくれて、ありがとう。」

シロップがそう言うと、メラゴンは少し照れたように返した。

「お礼はいいよ。むしろシロップに練習付き合ってもらうために呼んだんだから、お礼をしたいのはこっちの方だよ。」

「そうだった、早く真器を作らなくちゃだったね!早速練習しようか!」

 

そう言うと、シロップは石造りの広場の方へ走っていった。

メラゴンもその後を追おうと慌てて振り返る。

 

しかし、そこにいたのは、青白い光線に貫かれて倒れるシロップの姿だった。

 


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