先に動いたのはザブゴン。
一直線にこちらに突進してきた。
そして私の顔目掛けて剣の切っ先を突き出す。
凄まじい速さではあったが、突きは軌道が読みやすい。
頭を素早く下げて攻撃を躱し、すかさずザブゴンの懐に入る。
そして相手の勢いを利用して背負い投げた。
突進の勢いを殺しきれなかったザブゴンはそのまま遠くへ転がっていく。
私も伊達に鍛えているわけではない。
騎士を目指したあの日から、ずっと稽古してきたのだから。
投げ飛ばされたザブゴンは少し驚いた表情をして、その後すぐに何かを企むような悪い笑みを浮かべた。
「相変わらず体術だけは流石だな。だが、こいつは避けられるかな?」
そう言うと、ザブゴンは再び真器を生成し始めた。
青白い光に照らされて目が眩む。
直後に現れたのは5本の剣だった。
「なっ!?」
驚いた。
真器は一つを生成するだけでもかなりの集中力が必要なのに、ザブゴンが今作り出している剣は合計6本。
この年であれだけの心器を一度に作れる者はそういないはずだ。
狼狽えた私に、ザブゴンはすかさず両手で剣5本を投げてきた。
剣は素早く回転しながら大きく弧を描いてこちらに飛んでくる。
上下左右背後。5方向を完全に囲まれた。
更にザブゴン自身も剣を携えてこちらに向かってくる。これで前方も塞がれた。
避ける隙間を与えない数による攻撃。
ガードが出来ない私への対抗手段としては最高だ。
完全なる八方塞がり。これは無傷では済まないだろう。
私は被弾覚悟でザブゴンの方へ走っていった。
上、右、背後、下と次々に襲いかかる剣の攻撃を何とか躱し切る。
だがその隙を突いて、最後に左から飛んできた刃の切っ先が私の左足を直撃した。
「痛っ!!」
足を切りつけられ、態勢を崩した私にザブゴンが斬りかかってきた。
避けられない!
そう思い目を瞑った次の瞬間。
何かを弾いたような金属音が響いた。
「ガギンッ!!!」
思わず目を開けると、そこにはシロップがいた。
ザブゴンの剣を、何かで止めている。
「なっ!てめえ、何しやがる!」
「見ての通り、メラゴンを守ってる。」
ザブゴンが驚きに満ちた表情をしていた。それに対してシロップは冷静だった。
「いくら何でもやりすぎだよ。どうしてそんなにメラゴンにつっかかるんだい?」
「うるせえな、おまえには関係ないだろ!」
ザブゴンはシロップから一歩飛び下がった。
それに対してシロップは依然動かなかった。
ザブゴンが再び斬りかかろうとしたその時、担任のグリムロック先生の怒声が聞こえた。
「お前たち、何してるんだ!!!!」
顔を真っ赤にした先生がこちらへやってきた。後ろにはモリゴンちゃんがいた。恐らく先生を呼んできてくれたのだろう。
その後ザブゴンは先生から物凄いお説教を食らっていた。
そして負傷した私はシロップと一緒に保健室へ赴いた。