だあすう日記

初めまして。まったり生きてます。

無題 (パズドラZ 創作小説) 第5話

「痛っ…!」

「大丈夫?」

 

私はシロップに肩を貸してもらいながら、保健室へ向かう廊下を歩いていた。

先ほどのザブゴンとの喧嘩で負傷した左足が痛む。

 

「ごめんねメラゴン、僕がもっと早くに駆け付けていれば…」

 

「ううん、全然。というか私がザブゴンを挑発したんだし、自業自得だよ。それよりありがとう。私を助けてくれて。」

 

「当然のことをしたまでだよ。それよりその傷、どうしようか。」

 

心配そうに私の左足の傷を見るシロップの視線に対して、少し気まずくなり間を埋めるように言葉を繋げた。

 

「一応血は止まってるから大丈夫だよ!

だけど、これだとしばらくはまともに走ったりは出来ないかも。」

 

「そっか… あっ、そうだ!」

 

シロップが何かを思い出したような素振りをした。そして私を廊下の壁に座らせ、傷口に手をかざした。

すると瞬く間に、私の左足の傷口が塞がっていった。

傷跡も残っておらず、痛みも完全に無くなっている。

私の傷が完治したのを確認して、シロップが口を開く。

 

「よし、これで大丈夫なはずだよ。」

「すごい!もう治ってる。

もしかしてシロップは治癒系のスキルとか持ってるの?」

「スキル?…あぁ、うん。そうだね、そんなとこかな?」

 

少し照れたような顔をして、シロップは呟く。

保健室の先生も治癒のスキルを持っているけれど、こんな短時間では治せなかったはずだ。

本当に一体何者なんだろうか。

最初にシロップに感じた底知れない気配を思い出しながら、私はお礼を言った。

 

「改めてありがとう。守ってくれた上に傷まで治してくれて。お礼しなきゃだね。」

 

「全然いいよ、僕がやりたくてやったことだから。でも、どういたしまして!」

 

シロップが嬉しそうに笑うのをみて、私も嬉しくなった。

 

「そういえば、まだ私からちゃんと自己紹介してなかったね。

私はメラゴン。

でもあれ?シロップ私のこと既に名前で呼んでるよね?言ってないはずなのに…」

 

「えっ?…あぁ!さっきの喧嘩の時にザブゴンが君の名前を言ってたから、そのまま使っちゃってたんだ。」

 

あれ、でもシロップ、ザブゴンが来る前にも私の名前を言ってたような…。

そう思いいつつも確信が無かったため、その疑問は自分の心の中にしまうことにした。

 

「そうだったんだね。じゃあ、改めてよろしく、シロップ!」

 

「うん!よろしくね、メラゴン!」

 

そういうとシロップは私の前に手を差し出した。私も手を伸ばし、互いに握手を交わした。

 

「あのさシロップ。突然なんだけど、今日の放課後って空いてる?」

 

「うん!心器のことだよね?ザブゴンに遮られちゃったけど、ちゃんと覚えてるよ。」

 

覚えていてくれたのか。ザブゴンとの喧嘩でうやむやになってしまったかもしれないと内心ハラハラしていたため、その返事はとても嬉しかった。

 

「覚えててくれてありがとう!早速だけど心器を作るコツ、教えて下さい!」

 

勢いよくお辞儀する私に、シロップは朗らかに答えた。

 

「いいよ!でもまだ授業の途中だから、まずは教室に戻らなきゃだね。」

 

「そうだった!もう二時間目だったね。付き添いありがとう、シロップ。」

 

「いいえ!行こう、メラゴン!」

 

そういうとシロップは私の手を握ったまま走り出した。

実は教室と逆方向なのだけれど、そのことは黙ったまま私はシロップについていった。

自信満々に走っていく姿がつい面白くて。

 

そのせいで教室に大幅に遅れて到着した上に、保健室へ行くのも忘れていたことも相まって担任のグリムロック先生にめちゃくちゃ怒られたのは、また後の話。

 


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